thou2の設計について

THOUSAND(無印)完結から約3年の月日をかけ、リメイク版である統一正史(thou1)を完結させた。次回作の構想はそのとき既にあったが、私の制作活動の目標である「おもしろいものを作る」ために統一正史は必要だったと考える。
今回、THOUSAND西方外征(thou2)の制作に着手し始めて約2年が経過し、ようやくストーリー以外の全体像が明確になってきた。そこで大仰な言い方だが、thou2の設計「理念」、そしてシステムの概略について触れてみたい。

  • 設計理念

    • 統一正史の良かった点、悪かった点

統一正史を制作するにあたって考えたことは、まず、作りこんだシステムの上に重厚なストーリーをのせるということだった。
ここでいうシステムの作りこみとは、無印で実装したシステムをブラッシュアップすることも含まれていたし、新たな試みを入れ込むことも含まれていた。
たとえば「内政」を記号化して簡単にし、文字情報だけだった「編成」をビジュアル化した「部隊」に変更したりした。また、「演習」を追加してNPC戦闘による"部隊を指揮している感覚"を取り入れたりした。


プレイヤーの方に評価された部分は、この作りこみ部分である。ただし、同時に煩雑さを覚えられる方もいて、「探索」や「演習」を全くせずにクリアした、という方もいた。
このあたりはプレイスタイルのちがいによるもので、また一部のシステムを全くせずともクリアできるバランスに仕上げたつもりである。


ストーリーに関しては無印の悪い点、すなわち、いろいろなものを詰め込み過ぎてよく分からなくなっている点を改善した。導入の一話に気をつけて、登場人物数と主題をある程度絞り込んだことが良かったように思う。
主人公がいわゆる王道を選択しなかったことも評価の一部だ。これには賛否両論あるようだが、作者としてはやりたかったことなので今後も方向性は変えないことだろう。


戦闘部分は、毎話異なる戦術をとってもらえるように配慮した。"頭を使ってプレイしている感"を評価していただいたこともあった。だが、マップの広さや一話に時間がかかる点はマイナスの点であろう。


上記の良い点悪い点は、私の主観もあるが多くはプレイヤーの方の意見である。まとめると、


良い点:作りこみ、バランス、予想外のストーリー
悪い点:煩雑、システムが分かりづらい、時間がかかる


これらの点に集約される。




    • thou2で実現したいことのベクトル

作りこんだシステムの上に重厚なストーリーを―――このコンセプトは基本的には変わっていない。ただ、thou1である意味実験的に実装した「演習」システムを応用できないかと考えた。「演習」はもともとNPC戦闘を主としていたが、本拠地でユニットを作成するシステムが気に入っていたこともあり、戦闘のメインシステムにおくことにした。
ここで問題になるのは、ユニット作成の煩雑さである。パイロット、ユニット、装備を考えた場合、どうしてもボタン押下回数が増えてしまう。もともとはパイロット作成のシステムも考えていたが、そこはオミットして既にいるパイロット、ユニットを選択する形にした。


よく、二作目や続編はつまらなくなるという話を耳にする。私が思うに、前作を上回る期待を体験者が高くもっていることと、どうしても同じようなことをして二番煎じになりがちになるからであろうと思う。良い点を残して、悪い点を改善し、目新しいことをする、簡単に言えばそうなのだろうが上手くできた例は少ない。


thou2ではマップ上で自由にユニットを作成できるシステム(=徴兵システム)と、本国評価というポイントによるゲームオーバー制を採用することにした。ストーリーの関係上、主人公は常に本国からの評価で去就を決定される立場にあり、大敗や作戦の失敗を繰り返すと役職を罷免される、というわけだ。
本国評価の値により、ストーリー上の分岐やとれる作戦の内容も変えようと思う。ただしストーリーの主筋は分岐せず、脇役たちのストーリーが変化するようにする。大筋を分岐させるのは、長編制作時には時間的に命取りになる可能性が高いためだ。


徴兵システムと本国評価によって、thou1から戦闘部分をかなり変えることになる。ボーナスステップシステムも廃止し、個人対個人の戦闘ではなく部隊対部隊の大規模な戦闘にイメージを変えていただきたい。




    • thou2では改善されるか

先に述べた、
良い点:作りこみ、バランス、予想外のストーリー
悪い点:煩雑、システムが分かりづらい、時間がかかる
これらの点をthou2が踏襲、あるいは改善するかどうかについてだが、良い点を踏襲することはできるだろうが、悪い点を劇的に改善することはないように思う。


thouシリーズは良くも悪くも、「独自の設定やシステム」を基本とするものである。分かりづらさは必ずついて回ることだろう。分かりづらさを無くすことはできないが、Webページでの操作マニュアルの用意や、ゲーム内でのチュートリアルを強化したく思う。特にゲーム内チュートリアルに関しては、第3話くらいまでシステムを制限しておき、強制的に慣れてもらってからシステムを小出しにする形にする。たとえば、第2話までは戦闘だけにしておき、第3話以降にインターミッションコマンドを追加する、などである。




    • 主人公ニコル

thou1の主人公サウザンドはシリーズの主人公であるが、thou2では脇役となってもらう。thou2の主人公はニコル=コルニア、前作で登場した気弱な青年である。
thou1のサウザンドは、その冷酷無比な本性を現し、あたためていた野望を実現するまでの過程を描いたが、thou2ではニコルの挫折と苦悩を前面に押し出していきたい。thou1が完全無欠なリーダーシップを発揮する天才の物語だとすれば、thou2は組織を支える中間管理職といったところだろうか。ちがった面でのアプローチとなるだろうし、いま学んでいることもそのテーマに合致するところが多いような気がする。


理想像を描くわけではないので、前作よりもストーリーの起伏が求められるが、私がそれを描けるかどうかは連載開始してからの成長によるところが大きいであろう。
プレイヤーに何らかの情動を引き起こさせる話が書ければ良いし、また連載によって自分自身が成長できれば良いと感じている。





記事が長くなってしまったので、thou2のシステム概略については次回述べたいと思う。